東京都豊島区、難聴の早期発見に力 フレイル予防で着目
東京都豊島区が高齢者の聴力低下の早期発見に力を入れている。
加齢による難聴で意思疎通がしづらくなると、フレイル(虚弱)や認知症のリスクが高まるとされる。
区は無料の聴力検査を通じて、聴力低下がみられた高齢者には耳鼻科の受診や補聴器の使用などを促してきた。2022年度は地元医師会との連携強化も図る。
「ちゃんと聞こえているとわかって安心した」。
1月末に区内で開かれた聴力検査に参加した末松千年さん(76)は笑顔をみせた。
検査はアプリから聞こえてくる「あ」「が」といった単音20個を正確に聞き取れるかを調べる。
100点満点中60点未満だと難聴が疑われるが、末松さんは85点を獲得した。
区は21年7月から「ヒアリングフレイルチェック」と銘打って、高齢者を対象に区民広場などで無料の聴力検査を実施してきた。
点数ではっきりと聴力低下を示すことで、耳鼻科の受診や補聴器の使用など早めの対処につなげる狙いがある。
22年1月末までに337人が参加し、4割弱にあたる121人が60点未満だったという。
難聴は加齢に伴う現象で、65歳以上では半数超が当てはまるとされる。
一方で「年のせいだから」と放置しているうちに進行すると、コミュニケーション自体がおっくうになりかねない。
難聴をきっかけにした社会活動の低下が、認知症やフレイルのリスクを高めることになる。
豊島区が聴力検査を始めたのは、新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけだった。
感染防止のために窓口にパーテーションを設置したところ、「聞こえづらい」と訴える高齢者が相次いだ。
職員の声を聞こえやすくする機器を導入するなかで、開発企業から難聴の早期発見の重要性を指摘されたという。
3月には難聴がもたらすリスクや難聴者への理解を深めてもらおうと、専門家を招いて区民向け講座も開催する。
22年度は聴力検査を通年実施するほか、地元医師会と連携して補聴器の適切な使用を呼びかけていく。
高齢者福祉課は「『ヒアリングフレイル』は新しい概念なので、普及啓発にも努めていきたい」としている。
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