西城秀樹さんが闘った脳梗塞 「前触れ」あればすぐ診断、治療を

 

5月16日に急性心不全のため63歳で亡くなった歌手の西城秀樹さん。その生涯で2度の脳梗塞に襲われ、入院とリハビリを繰り返しながら歌い続けた。命が助かったとしても、体のまひなど重い障害を残す脳梗塞。どんな病気なのだろうか。山王病院・山王メディカルセンター(東京都港区)の内山真一郎・脳血管センター長に聞いた。

■脳卒中の4分の3

西城さんは、平成15年と23年に脳梗塞を発症した。懸命にリハビリに取り組んでいたが、右半身にまひが残っていたという。

脳の血管障害によって起こる病気を総称して「脳卒中」というが、そのなかでも脳の血管が詰まるのが「脳梗塞」だ。酸素や栄養が届かなくなることで脳細胞が壊死(えし)してしまい、手足のまひや言語障害などさまざまな症状が出る。以下に大別されている。

(1)脳の深い部分に血液を供給している細い血管が詰まることによって起こる、直径15ミリ以下の小さな「ラクナ梗塞」

(2)動脈硬化で狭くなった頸動脈や脳の太い動脈に血栓ができる「アテローム血栓性脳梗塞」

(3)心臓にできた血栓が脳まで運ばれ、太い血管を詰まらせる「心原性脳塞栓(そくせん)症」

高齢者に多く、厚生労働省の「平成26年患者調査の概況」によると、脳血管疾患の患者数は117万9千人に上る。また、同省の28年の人口動態統計によると死因の4位だった。

内山医師は「脳卒中のうち、4分の3が脳梗塞と言われています。肉や脂肪の摂りすぎ、カロリー過多など食の欧米化によって、近年脳梗塞が増えてきました」と話す。

脳卒中は、命が助かっても後遺症が出る場合が多く、寝たきりの原因にもなってしまう。同省の「28年国民生活基礎調査の概況」によると、介護が必要になった主な原因の2位が脳血管疾患で、16・6%だった。内山医師は「加齢とともに血管が硬く、もろくなり、脳梗塞のリスクが上がってしまう」と指摘する。

■一刻も早く病院へ

体の片側にまひが起こる、ろれつが回らなくなる、言葉が理解できなくなる、どちらかの目が見えなくなる…。脳梗塞の初期症状はさまざまだ。

「できるだけ早期の治療開始が重要。時間がたつと梗塞が拡大してしまう。死んだ神経細胞は生き返らないので、細胞が死んでしまう前に血流を再開させる必要がある」と内山医師は言う。発症したらすぐに医療機関を受診する。早期治療によって、その後の悪化を防ぐことができるからだ。

診断は、磁気共鳴画像装置(MRI)などを使う。急性期は薬物療法が中心になる。発症して4時間半以内の場合に選択肢となるのが、脳の血栓を溶かす「t-PA」という薬物だ。点滴注射で投与する。ただ、太い血管の大きな血栓には効かないことが多いという。

近年、注目されているのがカテーテル(細い管)による「血管内治療」だ。太い血管など、t-PAの効果が期待できない患者にも対応できる。発症後6時間以内に、太ももの付け根などからカテーテルを入れ、脳血管内の血栓を捉えて回収する。26年には、ステントと呼ばれる網目の筒状の器具で血管を広げて血栓を回収する方法も保険適用されるようになった。「治療を受けた5~6割の人が、日常生活を自立して送れる程度まで回復するとされています」と内山医師は言う。

発症後6時間以上経過している場合は、血液をサラサラにして血栓ができるのを防ぐ「抗血小板薬」や「抗凝固薬」が使われる。

■生活習慣に関連

脳梗塞の「前触れ」として知られているのが「一過性脳虚血発作(TIA)」だ。脳梗塞の症状が一時的に起こり、通常は数分~数十分程度、長くても24時間以内に治まる。だが、放置すると危険だ。内山医師は「TIA発生直後ほど、脳梗塞が続発する危険性が高い。治療しないと3カ月以内に脳梗塞が起こる確率が15%と言われている。前兆として重要なだけでなく、早期に治療する必要がある」と指摘する。

脳梗塞の再発率は年間4%程度とされるが、再発を防ぐためにも薬物療法などのほか、危険因子を避けることが重要だ。

内山医師は「脳梗塞のリスクは生活習慣とも密接に関わっています」と指摘する。危険因子として知られるのが、高血圧▽糖尿病▽脂質異常▽心房細動▽喫煙▽過度の飲酒-などだ。

内山医師は、「動脈硬化の原因となったり、心臓内に血液のかたまりをつくったりする原因となる病気や行動には注意し、症状が出たらすぐに医療機関を受診してほしい」と呼びかけている。(文化部 油原聡子)

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